豊饒の海二 「奔馬」 (著:三島由紀夫)

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洋書ばかり読みあさっていた自分が、まさか日本文学の領域に足を踏み入れることになるとは予想もしていませんでした。先日投稿をしました「春の雪」に続く本作品は、三島ワールドそのものです。

 

勲という剣に長けた青年(清顕の生まれ変わり)が、腐敗していく日本にメスを入れるべく一念発起を試みるストーリーですが、主人公には数々の壁が待ち受けています。

 

気難しい父との確執や、剣を交えての師匠とのぶつかり合い、同志との結束など、どのシーンをもっても、勲は凛々しく勇ましくありました。剣道で磨き抜かれた体力と精神が彼を奮い立たせたのかもしれません。

 

現代の青年に勲のような熱い情熱はあるのでしょうか。思い返せば、若年層の間での不祥事や悪質・凶悪事件がニュースに取り上げられることが多くなっているように思います。なぜそのような凄惨な事態が起きてしまうのか、、それは情熱や怒りを傾ける場所が分からないからかもしれません。

 

ストレスを発散するには、趣味に没頭したり、体を動かすなど、様々な形があります。何かに不満があるのならば、不満を発生させる現物を消滅させる以外にも、自分が変わる、環境を変えるなど、自分の身を守る術はたくさんあります。「ものの見方を変えること」、これが皆で共生する上で重要なTIPSなのかもしれません。

 

自らの信念を貫くべく自決を決意する主人公、残された家族、腐敗の一途をたどる日本…これら奔馬のストーリーをよく観察すると、三島由紀夫自身の自伝にも聞こえてきます。壮絶な最期を迎えた三島本人は、勲に重なり、深く読めば読むほど心苦しくなってきます。危険を冒してまで自らの信念を守り通した、勲と三島。私たちは、今後の日本になくてはならない変革者をなくしてしまっていないか、今一度周りに目を向けたいものです。